『拾われバニーガールの玉の輿恋愛~完璧社長は貴族でした!?~』
        ​                番外編~北海道ドライブ旅行~

 香澄(かすみ)はこの上なく幸せな心地で助手席に座っていた。

 

 季節は夏。北海道で一番過ごしやすく、美しい時期だ。
 そんな時期に香澄は佑(たすく)の運転する車で、道央(どうおう)自動車道をぐんぐん進んでいた。
 札幌近郊には佑の所有するガレージがあり、そこから彼はクラウザー社の車を運ばせてきた。

 

「佑さん、普段はアドラーさんの車に乗るの、あんまりいい顔しないのにね? 反抗期っていうか……」

 

「こら、反抗期って言わない。クラウザーの車は大体がもらい物だから、あまり乗る気にならないだけだよ。理由を挙げるとすれば、ドイツの車は長距離を走るのに向いているんだ。特にクラウザーの車は乗り心地と安全性を一番に考えている。安全装備のACCは勿論あって、停車しても三十秒以内なら発進も自動で行ってくれる。一般的なACCだと軽くアクセルを踏むか、最高でも三秒しかACCをキープできない。そういう点でも、クラウザーの車は長距離運転をするのに向いていると思う」

 

「えーしーし…………。う……うん……」

 車に関する専門用語が出て、香澄は分かったふりをして相槌を打つ。
 いまだ免許は持っていないままなので、香澄は車に関する話題に乗る事ができない。
 ただ、助手席に座っていると、ウィンカーをあげるのとワイパーを動かすレバーなら動かせそうだと思っていた。
 ちなみに、挨拶のためにハザードをチカッとするのも、ドライバー同士の思いやりのようで温かな気持ちになる。

 

 今回の北海道ドライブ旅行は、北竜(ほくりゅう)町でひまわりを見て、美瑛(びえい)に行って青い池を見る。それからファーマー富田(とみた)に行ってラベンダーを見てから、宿である月野(つきの)リゾートに泊まる予定だ。
 帰りは夕張でメロンを買い、両親へのお土産にする。

 

「メロン、楽しみだなぁ。ホテルも楽しみ。あそこのジェミニタワー、実は前から憧れてたんだ」
「ふぅん? 道産子だから憧れてた?」

 

「うーん……。というか、大学生の時に高校時代の友達と会ったら、長時間惚気られちゃったんだ。彼氏とドライブ旅行に行って、道の駅のスタンプラリーをしたんだって。で、途中で喧嘩もしたんだけど、大学生なのにまさかの月野リゾートのホテルを取ってくれてて、大感激したんだって。それで指輪ももらって……って、延々と惚気られて。いやぁ、当時はご馳走様です……っていう感じだったんだけど、やっぱりそういうの『いいなぁ』って思ってたから」

 

「じゃあ、俺がもっとスゴイコトをしてあげよう」

 

 くく、と愉しそうに喉で笑った佑を、香澄は怖いものを見る目で見やる。

 

「佑さんは通常モードがすでに凄いので、特に何もしなくてもいいよ。その憧れだって、大学生時代のものなんだから。今は今で、佑さんと出会ってたくさんの幸せをもらったし、もう誰かの惚気を羨ましがったりしないよ?」

 

 その言葉は、半分は本当で半分は嘘だ。
 自分がどんなに身も心も満たされても、人の話を聞くとつい「羨ましいな」と思ってしまうのは、人の悲しい性(さが)だ。

 

 佑には絶対に言わないが、友達と彼氏の何気ないデートの話を聞いて「普通に手を繋いで、交通機関を使ってその辺をブラブラ歩くデートをしたい」と思ってしまう。
 ごく一部、麻衣(まい)など親しい人しか分からない、香澄が羨ましがるポイントだ。

 

 香澄は自分の事を、決して「恵まれている」など言わない。自分がまだまだ未熟で満たされていないのは、自分でよく分かっている。
 けれど世間的には「あの御劔(みつるぎ)佑に選ばれた、希有な存在」と思われている。
 自分がどんな心理で「羨ましい」と思っても、ほとんどの人からは「いやみだ」と思われるのを分かっていた。
 もとから色々な感情をしまい込む性格な事もあり、香澄は自分の望みを口にするのが下手だった。

 

「そうか? でも、もし望むデートプランがあったら、いつでも言ってくれ。俺は香澄の望みを叶えるのが生き甲斐だから」
「またお父さんみたいな事、言う」

 

 クスクス笑って茶化しながらも、香澄は自然に自分の人となりや性格を把握してくれる佑を、本当にありがたく思っていた。

 それから一時間半ほどで北竜町に着いた。

 

 

「すごいねぇ!」

 

 快晴の空は、微かな雲が僅かに浮かんでいるのみだ。
 真っ青な空と丘の上の木立を背景に、一面のひまわりが咲き並んでいる。

 

「見事なもんだな」

 

 大草原ならぬ大ひまわり原と言える風景に、さすがの佑も笑みを浮かべた。

 

「佑さん、写真撮ってあげる」

 

 香澄はスマホを構えると、こちらを向いて微笑んでいる佑をパシャッと撮影する。
 周囲からは「なぜ御劔佑がここに!?」いう視線をもらっているが、佑はまったく気にしていない。
「御劔佑が婚約者とお忍びで……」と激写したがる者が少なからずいたが、あからさまに撮影しようとする者は、護衛たちが「失礼ですが……」とやんわりと断りを入れていた。

 

(あ……。あっちで拝んでる人がいる)

 

 視界に入った若い女性数人は、佑を見て「御劔様……、尊い」と言いながら胸の前で手を合わせていた。

 

「佑さんってひまわりみたいな人だね」
「そうか? 俺はもっと日陰に咲いてる…………あぁ、そうかもしれないな。もし俺がひまわりだったら、香澄は俺だけの太陽だ」
「え……」

 

 思わぬところから甘い台詞がきて、香澄は固まったままジワジワと赤くなってゆく。

 

「香澄だけを見て生きて、香澄がいなくなったら萎れてしまう。……そうか、俺はひまわりだ」

 

 最後は「いい事を知った」という風に微笑み、彼は香澄の手を握り、道なりにゆっくり歩いていく。

 

「いい所に連れてきてくれて、ありがとう」
「ううん。観光地っていう観光地があまり思い浮かばなくて、前に麻衣と一緒に行った日帰りバスツアーをなぞってるだけなの」
「ふぅん? 俺は二番手か」
「ちっ、ちが……っ、も、もぉぉ……」

 

 一瞬焦ったものの、佑はからかうような笑みを浮かべていたので、香澄は安堵しつつ笑う。

 

「ごめんね? 地元なのにあんまりドライブで楽しむ行き先とか、あまり知らないの。運転しないからかもだけど」
「いいや? 北海道は広いもんな。観光向けじゃない場所でも、自分の心に響く絶景があるかもしれない。二人でじっくり探していけたらいいな」
「うん」

 

 それから歩いている途中にあった〝幸せの鐘〟を二人で鳴らすところを、生暖かい微笑みを浮かべた呉代(ごだい)に動画を撮ってもらった。
 彼がそのあとしょっぱい顔になり、「彼女ほしい……」と項垂れたのは言うまでもない。

 

 土産物屋でひまわりの種でできたお菓子を買い、さらに一時間半近くをかけて、次の観光ポイントの青い池に着いた。

 

 

「ここの地名も〝白金〟って書いて〝しろがね〟って言うんだよ」
「へぇ」

 

 駐車場から池までの道のりを歩く環境は、緑が多く気持ちがいい。
 観光客が多いのが少し残念だが、綺麗に見える季節に来たいのは皆同じなのだろう。

 

「そうだ。今回の予定には入ってないけど、タウシュベツも行ってみたいな」
「……たうしゅべつ?」

 

 聞き慣れなかったのか、佑が不思議そうに聞き返す。

 

「上士幌(かみしほろ)町の糠平湖(ぬかびらこ)にある、廃線跡のアーチ状になってる橋なの。六月頃からダムの水位が上がって、八月から十月には水没しちゃうんだけど、水に橋が映ってる写真とか、冬の雪の中にある橋の写真とか、いいなぁ……って思ってたんだ」

 

「へぇ。今日ホテルについたら調べてみるよ。今度来た時の目当てにしようか」
「うん。個人で勝手に行けないかもだから、事前に自然ガイドセンターに予約がいるかも」
「そうか、分かった」

 

 話しているうちに、右手にある木立の間から真っ青な池が見えてきた。

 

「あっ……、綺麗に見えてる。良かった」
「どれどれ……」
「あのね。先に行くと開けている所があるから、そっちのほうがよく見えるよ」
「よし、行ってみよう」

 

 手を繋いだまま歩いていくと、やがて木立の切れ目から青い池が美しく見えた。

 

「凄いな……。本当に青い」
「端っこのほうに看板があって、どうして青いのかとか説明が書いてあるよ」
「へぇ。じゃあ、『なぜ』は一旦置いておいて、綺麗な池をじっくり楽しもうか」
「うん」

 

 それから二人はゆっくりと青い池と、池の中から生えている立ち枯れた木々という、不思議な景色を存分に楽しむ。

 

「空も青いし、池も青くてすごいね」
「ああ。それに池の中の木が白くなってるのも、コントラストがあって美しい」
「冬になると周りの山とかが真っ白になって、青と白だけの景色になるんだって。あと、夜になるとライトアップもするとか」
「へぇ。紅葉時期も綺麗そうだな」
「……ブルーハワイみたい」

 

 ボソッと呟くと、佑が音もなく笑い崩れた。

 

 それから呉代に記念撮影をしてもらい、美瑛にあるフレンチレストランに向かった。

 

 

 

 田園の中にあるフレンチレストラン『bi.ei』は、窓一杯に長閑な風景を眺められる内装だ。廃校となった小学校の敷地内に建てられ、アプローチが広い。
 入店した正面ホールには、焼いたパンを売っているコーナーもある。そこを左手に向かうと、レストランに通じている。

 

 レストランは二〇一七年に北海道ミシュランで一つ星を取ったとの話だが、雰囲気的にナチュラルで居心地が良かった。
 オーナーシェフは、札幌で評判の高いレストランで長年シェフを務めた人物らしい。

 

 ワインのような瓶から水が注がれ、水はどうやら美(び)瑛(えい)不(ふ)動(どう)尊(そん)の水のようだ。
 ライ麦パンは歯ごたえがあり、噛んでいるうちに粉の甘みが出てきてとても美味しい。
〝丘のプラトー〟と呼ばれる前菜が運ばれ、芸術品のように数種類の前菜が一つの器に飾られたそれを、自分のプレートに盛るスタイルになる。

 

「さすが北海道。野菜が美味いな」
「うん。ラタトゥイユがとってもジューシー」

 

 調理されている野菜から、生野菜まで、どの野菜も新鮮で味がいい。ニシンのスモークもあり、ニシンなだけあって小骨があったが、柔らかくて細いのでまったく気にならない。

 

「スモークって言ったらサーモンのイメージがあったけど、ニシンもスモークできちゃうんだね」
「凝っている人は、専用のスモークマシンで何でも燻製にするらしいしな」
「ああ、そうだね。ニセコのおじさんがそのタイプかな」

 

 話題に出すと佑は微笑んでくれたが、二人ともチラッと穏やかではない思い出が脳裏をよぎり、なかった事にして食事を続ける。
 その後、サクサクとした歯触りと加熱されてトロッとした食感が味わえる、海老詰めのズッキーニのフライが出され、ポークとレバーのパテも出された。
 かぼちゃの冷製スープは優しい甘さがクリーミーなスープとなり、夏場に美味しい一品だ。
 そしてフェルトでできたマットの植えに赤いココットが置かれ、ギャルソンが蓋を取るとフワッと蒸気が立ち上る。その中から現れたのは、採れたて美瑛野菜だ。
 どれも自然の旨みや甘みがあり、シンプルに蒸されたシャキシャキの歯触りがある。
 北海道産米ななつぼしを使用した、チキンのピラフ詰めは、中のピラフにブイヨンがしっかり染みていて美味しい。
 最後はチョコレートケーキの牛乳アイスのせが出て、コーヒーを頂いてフィニッシュにした。

 

「ああ、美味しかった。でもパンを食べるのも楽しみ」

 

 レストランを出る前に、もちろん美味しそうだったのでパンも買った。ホテルに着いたら佑と一緒に食べる予定だ。
 ランチの予約は少し遅い時間だったので、これからゆっくりホテルに行けばチェックインするのに丁度いい頃合いだ。

 

「のどかだな」

 

 車に乗り込んで移動する前に、二人はレストラン前にあるベンチに座ってのんびりと景色を見ていた。

 

「佑さんと北海道ドライブ、来られて良かった」

 

 心からの言葉を口にし、香澄は佑の肩に頭を預ける。

 

「俺もだよ。思い切って休暇を取ってみるものだな」

 

 佑はいつものスーツ姿とは違い、Tシャツにジーパンというカジュアルな格好だ。

 

「北海道の夏は気持ちがいいな。東京と違ってジメッとした湿気がない。広くて空気も美味しいし。……はぁ、ニセコの別荘の他にもセカンドハウスを持とうかな」
「んふふ。褒めてくれるのは嬉しいけど、札幌じゃない限り、利便性は低いと思うよ? 札幌市内なら色々手に入るけど、地方はそう簡単じゃないもの。あと、冬はお勧めしないな。佑さん、冬道の運転に慣れてなさそうだし」
「結構違うものか? 小金井さんとか瀬尾とか、大雪が降った時は慎重に運転してくれてるけど、俺じゃあ難しいかな?」
「うーん、まず装備タイヤが違うでしょ? けど、冬タイヤを過信しても駄目なの。冬タイヤでも滑る時は滑るから。『あっ!』と思った時とか、ブレーキをベタ踏みするとABSが働くんだよね。でもそこまでじゃない時は、赤信号で停まるのにかなり前からゆっくり何度もブレーキを踏んでじわじわ車を停めるとか……。冬道運転テク、結構あるんだよ?」
「ふぅん? 香澄は免許を持ってないのに、詳しいな?」

 

 佑はからかうような笑みを浮かべ、香澄の鼻をつまんでクニクニと揺さぶる。

 

「ふが。らってお母ひゃんの運転見てるひ……」
「お義母さんの運転ならいいけどさ」

 

 クスクス笑って佑は香澄の鼻を離し、お詫びと言わんばかりにチュッと頬にキスをする。

 

「んー? 妬いてたのかね? 御劔くん」

 

 香澄も笑い、肘でツンツンと佑をつつく。

 

「可能性によっては妬くよ?」
「もー」

 

 いつもと変わらない佑に香澄は笑い、彼の肩に頭を寄せた。

 

 

 

 その後、ラベンダーで有名なファーマー富田に向かった。

 

「綺麗だねぇ!」

 

 一面広がるラベンダーを見て、香澄が歓声を上げた。

 

「他の色んな花も咲いてるんだな」

 

 さすが〝北海道と言えばラベンダー〟というだけあり、観光客の数が凄い。
 花を見ながらゆっくり歩き、土産物屋などを置いている施設に入る事にした。

 

「可愛いね?」

 

 北海道の土産物屋と言えば、お洒落な感じはあまりないと期待していなかったのだが、カントリー調に整えられ、内装がお洒落だ。
 高い天井にはシーリングファンがあり、ドライフラワーを使ったアート作品が目を楽しませ、土産物も定番の物から少し手の込んだ物まで幅が広い。

 

「何か買うか?」
「んー、親には特に買わないけど、会社の人には何か買おうかな」

 

 そう言って香澄は入浴剤などを見始め、普段使いできそうな、それでいて可愛い物をちょこちょこと手に取る。

 

「お土産にやっぱり定番お菓子は外せないっしょ」

 

 そう呟いた香澄はお菓子の箱も手に取るのだが、何気に「~っしょ」と北海道弁が出ていた事には気付いていない。
 佑は無言で笑い、「可愛い、可愛い」と悶えていた。

 時間を掛けてラベンダーの他にも色々花が咲いている敷地を歩き、車でホテルに向かうとチェックインするのに丁度いい時間だった。

 

 

 ジェミニタワーで有名なそのホテルは、香澄もずっと憧れていた場所だ。
 佑は百二十平米あるスイートフォースルームを予約してくれ、香澄は窓から見える景色の良さに歓声をあげた。

 

「すっごい! 景色がいいねぇ」

 

 広々としたリビングに、窓から大自然を望みながら入れるジェットバス。
 それとは別にシャワーブースとサウナも完備されている。
 二人で泊まるにはもったいないがベッドは四つあり、ロフトにももう一つベッドがあった。
 一通り部屋を見て満足したあと、香澄はソファに落ち着いてテーブルの上にあるホテルの案内パンフレットを見始める。

 

「香澄の中の〝いい景色〟って、やっぱり大自然なのか?」
「んー? うん……。そう……かな? やっぱり緑があると落ち着くね? 海とかでも好きだけど」

 

 返事をしてから香澄はハッと佑の意図する事に気付いた。

 

「べっ、別に東京の夜景より好きとか、そういうのじゃないからね? 東京は東京、北海道は北海道。皆違って皆いい」

 

 最後は誰かが言っていた言葉を口にし、隣に座った佑の肩をポンポンと叩く。

 

「慰めてくれなくても、落ち込んでないけど」
「うそぉ。拗ねてる~」

 

 香澄はクスクス笑い、佑の頬にチュッとキスをした。

 

「機嫌直して?」

 

 すると彼は微笑んでこちらを見て、香澄を抱き寄せてくる。

 

「仕方ないな。香澄がそこまで言うなら機嫌を直してもいいけど……」

 

 二人とも最初から茶番だと分かっていながらも、毎回お決まりのセオリーを辿って〝仲直り〟をする。

 

「お風呂で仲直りしますか? お背中流しますよ?」
「じゃあ頼もうかな」

 

 そこまで決められた台詞のように言ってから、二人はとうとう顔を見合わせて笑い出した。

 

 

 

「ん……」

 

 まだ窓の外は明るく、生い茂った緑が目に眩しい。
 香澄はジェットバスに浸かったまま佑の膝の上に跨がり、彼の首に両腕を回してキスをしていた。
 佑もお湯の中で香澄の背中やお尻を撫でてくれ、その優しい手つきが心地よくて堪らない。

 

「好き……。佑さん、好き」

 

 香澄は呪文のように佑に囁き、彼の頬を両手で包み何度も口づける。
 顔を離しては嘘のように美しい彼の顔を見て、ときめいてはまたキスをする。
 自分だけに向けられる愛しげな目を見て、下腹部がキュンと甘く疼いた。知らずと腰を揺らすと、すでに硬くなっている屹立が香澄のお腹を押す。

 

「俺も香澄の事が好きすぎて辛いんだけど、どうしたらいい?」

 

 佑は優しく香澄の唇をついばみ、目の前で甘く微笑んでくる。

 

「どうしよ……っか……」

 

 香澄はわざとらしい事を言い、体を揺らして乳房を佑の胸板に擦りつける。
 ふんわりとした双丘が佑の胸板に押しつけられ、柔らかく形を変えては凝った乳首でツツ……と擦る。

 

「悪い……うさぎだな」

 

 佑は溜め息をついて唇を舐め、香澄の尻の谷間に指を滑らせる。
 すでにたっぷり潤った場所はすんなりと佑の指を受け入れ、節くれ立った長い指を含んできつく締め付けた。
 柔らかく膨らんだ膣壁を指の腹で擦られ、香澄は子犬のように鼻を鳴らす。

 

「締め付けが良くて、やっぱり悪いうさぎだ」
「……悪いとどうなるの?」

 

 潤んだ目で佑を見つめ、香澄は自分の頬を撫でる佑の指先に口づけた。

 

「串刺しにされて、食べられるかな」

 

 直接的な事を言われ、香澄はクスクス笑って佑に抱きついた。

 

「うさぎを食べるのは、悪い狼かな? ……悪いなぁ」

 

 もう一度彼にキスをし、香澄は佑の屹立に手を這わせて何度か擦る。刺激を与えなくてもそこはすでに硬くずっしりと張り詰め、香澄の中に潜りたいと存在で訴えている。
 顔を真っ赤にして目を潤ませたまま、香澄は膝立ちになって佑の亀頭を自身の蜜口にあてがった。

 

「ん……、ん……」

 

 亀頭が蜜口を押し広げ、香澄が体重を掛けるとヌプ……と太竿が体内に入り込んでくる。

 

「ぁ……っ、は、あ……っ」

 

 切ない声を上げた香澄の口を、佑の唇が封じた。

 

「ん……っ、ん……ぅ」

 

 力強い舌に口内を舐め回され、ゾクゾクと全身が愉悦に震える。
 口腔に溜まった唾液を嚥下した時、香澄の腰を掴んだ佑が下からズンッと突き上げてきた。

 

「っひぁあ……っ!」

 

 最奥まで亀頭が届き、香澄は腰を柳のように反らして快楽を表す。

 

「ん、んー……っ」

 

 全身にジィン……と悦楽が広がり、香澄はカチカチと歯を鳴らして耐えようとする。

 

「我慢しなくていいよ。入れただけで達ったのは分かってるから」

 

 佑が言う通り、香澄の蜜壷はピクピクと震え、彼の射精を促していた。

 

「気持ちいい……?」

 

 佑が香澄にキスをし、優しい目で尋ねてくる。

 

「きも……ち、い……ぃ」
「良かった」

 

 香澄はうっとりとしたまま顔を傾け、佑の唇を舐め、ぷちゅっとキスをした。
 目を閉じて気持ちよさに浸っていると、佑が指で香澄の乳首を弄ってくる。つぅっと乳輪をまるくなぞってから、勃ち上がっている乳首の横を擦り、じわじわと気持ちよさを伝えてくる。

 

「あぁ……、あ……」
「香澄、ナカがきゅうきゅう締まってる。気持ちいいんだな」
「うん……。気持ちいい……」

 

 トロトロになった顔で香澄は微笑み、堪らなくなって佑に抱きついた。

 

「……好き……」

 

 お湯で温まった体に身を預けて佑の屹立を蜜壷に含んでいると、それだけで気持ち良くて頭がぼんやりしてくる。

 

「香澄? 寝たら駄目だぞ?」

 

 クスクス笑った佑が頬にキスをし、香澄の腰を掴んで一度屹立を引き抜いた。

 

「香澄、そっちに向かって手をついて」
「ん……」

 

 言われて香澄は窓のほうに向かってバスタブの縁に手をつき、佑にお尻を向ける。

 

「今日も綺麗だよ」

 

 佑は日差しを浴びて白くまろやかに光る香澄の背中をたどり、その手でお尻もまるく撫でる。

 

「や……、ん……」

 

 いつになってもバックの体位は恥ずかしく、香澄はチラリと彼を振り向いて軽く睨んでみせる。
 けれど無意識に腰を揺らしていたからか、佑は「誘ってる」ととったようで、嬉しそうに微笑んだ。

 

「いま挿入(いれ)るよ」

 

 佑は亀頭を香澄の花弁に擦りつけたあと、蜜口に押し当て、ズププ……と埋め込んでくる。

 

「ん……っ、ぁ、あ……っ、あー……」

 

 お湯の中とは違い、やはり直接粘膜が擦れ合うのが気持ちいい。
 香澄はトロンとした顔で窓の向こうを見て、存分に佑の肉棒のたくましさを味わった。

 

「あ……っ、ぁ、あ……っ、ん、んぅ、んーっ、ん、あ、あ……っ」

 

 ヌプッヌプッと太い肉竿が出入りし、亀頭で最奥を優しく押し上げられる。
 香澄は目を閉じて気持ちよさを貪り、無意識に自ら腰を揺らす。

 

「……んーっ、お、奥……っ、気持ち……っ」

「良かった。ここはもっと気持ちいいだろ?」

 

 そう言って佑は香澄のお腹に手を這わせ、結合部から蜜をすくい、膨らんだ肉粒に塗り込んできた。

 

「っきゃぁあ……っ! ……っぁ、あぁああ……っ!」

 

 香澄はバスタブの縁をギュッと掴み、全身を震わせて膣肉を引き絞った。

 

「っ香澄……っ、いいよ……っ」

 

 佑は腰を押しつけ、グチグチと最奥をこねるように細かく香澄を揺さぶってくる。
 手は陰核を優しく撫でたままで、香澄はバスタブの縁に縋り付いたまま啼き喘ぐしかできない。

 

「んぁああっ、あっ、あぁあーっ!」

 

 そのまま佑は満足いくまで香澄をいじめ抜いた。
 香澄が絶頂して膝からくずおれるたびに、佑はしっかりと彼女を支え、行為を続ける。
 雄大な自然を前に喘いでいると、まるで外でいけない事をしている気持ちになる。

 

「ふ……っぁあ、あ、……ぁあ、あ、……っ、ちくび、……っだめぇ……っ」

 

 何度も達かされてトロトロになっているというのに、佑は後ろから両方の乳首を指で弾き、香澄は膣肉を痙攣させる。
 最初は愛撫されても快楽を分かりづらかった箇所が、今では開発されてとても敏感になっている。
 指の腹で優しく何度も擦られ、弾かれてはたまに爪で先端のへこみを引っかかれ、香澄は何度目になるか分からない絶頂を味わった。

 

「ん……っ、出す、……よ……っ」

 

 耳元で佑の熱の籠もった声がしたかと思うと、膣内で大きく膨らんだ一物がビクビクッと震え始めた。

 

「っん、はぁああ……っ、あ、ぁ、……んーっ、ン、あぁ、……あぁあ……」

 

 容赦なく白濁を体内に浴びせられ、香澄は密着した佑の体温を感じながら満たされる喜びに耽溺する。
 やがて二人の昂ぶりが収まった頃、繋がりを解いてまた温まるのだった。

 

 

 

 その夜は勿論ベッドで愛し合い、翌朝はゆっくりと部屋で朝食を頂いてから、周囲を散策し、札幌に帰る道のりを走る。
 途中、メロンで有名なファームに寄り、佑が「ご両親に」と立派なメロンを買ってくれた。
 晴れ渡った夏のドライブは、美しい景色と美味しい料理、そして佑のたっぷりとした愛情に包まれて終わるのだった。

 

  完